【脱党支援センター2019年12月10日 西郷稲造 作文】
先月、ローマ教皇が、長崎・広島を訪問し、核兵器廃絶について国境を超える力強いメッセージを発しました。
日本を含め核兵器禁止条約に背を向けたり、平和について語るだけで共に行動を起こそうとしない国々への批判の声でもありました。
オバマ大統領のプラハでの「核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意を明言した」演説よりずっと具体的で、目標としての旗を掲げたもので、カトリック信者以外にも大きな影響力を持ち、真の世界平和の実現に向けての期待を抱かせてくれるものでした。
フランシスコ教皇は、アルゼンチン人で、南米から初めて教皇に選出され、しかも日本でもよく知られている「フランシスコ・ザビエル」と同じ「イエズス会」からの初めての教皇だということです。中南米では殆どがカトリック教徒で、ポルトガル語の「ブラジル」以外は主にスペイン語を話していますが、それにはイエズス会の力が大きく関係しているものと思います。
小生は、中南米勤務も多かった(パラグアイ2年、ボリビア4+3年、ドミニカ共和国3年)ので、その時の経験を少し書いてみます。
中南米では、ヨーロッパ人がやってきて造った町の殆どが、教会を中心としてその前の広場に面して役場や郵便局等を配して作られていて、大都市になれば分岐しますが、通常は、住民の生活そのものがその教会を中心に営まれてきました。イエズス会宣教師は、マラリアや黄熱病の多発する熱帯の未開地の奥深くまで入り込み、キリスト教の布教に励むとともに原住民を教育してきました。
その施設が今や朽ち果ててしまっている処(イグアスの滝のやや下流のパラグアイ側とアルゼンチン側に、国境の河を挟んで在る2つの遺跡や、ボリビアのアマゾン川上流の原始林の中の遺跡等)を見たことがありますが、レンガで造った建物群の規模や、種々部屋跡の様子等からも、当時のイエズス会の力の入れ方を伺い知ることができました。
近代文明とはかけ離れた世界の、裸族に近い原住民を捕まえて、強制的に施設に収容し、キリスト教や言語等を教育したようで、人権上は非難に値するやり過ぎたこともあったかもしれません。
しかし、このところ。この話題になっている、中国政府による新疆ウイグル自治区での強制収容は、比較にならない程極めて酷く悪質なものと思われ、決して看過できるものではありません。
「中国共産党独裁帝国」の皇帝による、ウイグル族を不当に弾圧し圧殺しようとする政策であり、異文化を認めず強引に漢民族化しようとするものです。
チベットについても、毛沢東の人民解放軍による武力侵略により、ダライラマは逃げ出さざるを得ず、未だにインド北部に亡命政権として追い詰められており、チベットには中国からの鉄道も引かれ、漢民族化に拍車がかかっています。
また、同じ民族である香港に対しても、一国二制度の約束を守らず、人権を踏みにじって党への従属を強要するため、香港住民の大多数が中国からの離散を志向する傾向さえ出てきている始末です。
中南米の話に戻します。
南米大陸は、西海岸寄りにアンデス山脈が走っていて、山地と平地がはっきりと分かれています。
コロンブスの発見によりヨーロッパ人が植民地化し始めるまでは、低地は暑い上に吸血虫類や風土病が多いため、少数の裸族に近い種族だけが住む未開地であったが、山地部はその反対で住み易かったため人工密度も高く、インカのような高度な文明もありました。
インカ帝国が、スペインにより征服され、金銀財宝を略奪された後、山地原住民は世界一を誇ったポトシ銀山等の鉱山労働者としても使役されてきたり、都市での雇用労働者となった者も少なくないが、ケチュア族やアイマラ族の多くは衣食住は未だに昔のままに近い生活をしている者も多い。
アンデス山地の富士山より高いところは、空気が薄くて慣れないと高山病になることも多く、よそ者は住み難いため、地方では勿論、都市でも原住民系の人々が多い。飛行場が4千mを超えるボリビアの首都ラパスでは、街の中でもアイマラ族の人々が独特の山高帽をかぶり、ポンチョ着て働いている姿を普通に見かけます。
政治的には、征服者であるヨーロッパ系の人々を中心に行われていましたが、腐敗政治や汚職は絶えることがなく、数十年前の私が1度目に勤務した時には、4年間で5回もクーデターがあったとおり、政情は安定してはいませんでしたが、下層におかれたままの地方の原住民にとっては、少々の政権交代が有っても関係なく、従来とあまり変わりのない生活をしていました。
ところが2005年に、ボリビアで初めて原住民出身のエボ・モラレス大統領が選出され、スペイン植民地以来、少数の白人系住民が実権を握ってきたこの国に、国民所得を向上させ中間層を拡大させる等大きな変化をもたらしました。 しかし、2019年10月の大統領選で当選し4期目に入るところで、選挙に不正があったとして国家警察や軍隊、一部の官僚や政治家からも辞任を要求される事態に陥り、辞任と再選挙を表明したが叶わなかったため、先月にメキシコへ亡命しました。事実上の クーデターとみられています。長期政権の弊害が出たのかも知れません。
選挙については、私が滞在していた当時は、言葉は解っても読み書きが出来ない人も少なくなかったため、投票を色で分けで行っていたので、誰がどの候補者に投票したかが解り易く、酷い処では投票所そのものが買収されていて、一人の候補者の用紙しか置いてなかったという例も聞きました。
現在は、どの程度改善されているのか知りませんが、選挙に不正が介入され易い状況が根強く残っていたのかと思っています。
運転免許証を金で買えたり、少し金を掴ませると交渉がスムーズに進む等、選挙に限らず何事においても、賄賂を求める汚職体質はありましたが、金額的には少額でした。
このような傾向は、南米に限らず世界各国でも見られるかも知れませんが、中国も元来の拝金主義や汚職体質に加へ、近年の金回りの良さにより、利権から得られる金も莫大なものがあるため、上層部にはその金を海外に持ち出して隠蔽した上、子供をアメリカやカナダに住まわせておいて、いざとなればそこへ亡命しようと準備している者も少なくないようです。
最近、キリバスや、ソロモンが台湾と断交して中国と国交を結ぶ等、中国の南太平洋諸国への進出が目立ちますが、その地域のある小さな国では、中国人が、多くの国へビザなしで入国できるパスポートを多数購入しているとも言われています。
ドミニカ共和国に滞在していた時には、政権交代が国民生活に直結する話を聞きました。
同国は、コロンブスが到着して以後、原住民は殺戮してしまったようで、サトウキビ畑等の労働者にアフリカの黒人を連れてきたため、黒人の多い国です。反米感情を持つ南米と異なり、どの政権においても親米的でしたが、政権を担う公務員は、トップが変われば大きく入れ替えが行われ、極端な場合は、掃除職のレベルまで変わるとのことでした。 従って、国民は、選挙の勝ち負けが死活問題にもなるため、どちらに転んでも生きていけるよう、家族の中でも支持政党を意図的に分ける事もあるとの話まで聞いたことがあります。
日本にも汚職はありますが、相対的には少ないため、これまで諸外国から「日本は正直で勤勉な国民である」と言われてきました。 また、官僚がしっかりしていため、内閣が少々変わってもそれ程心配要りませんでした。
ところが、最近は官邸が官僚の人事権を握ったためか、不当な「忖度」が横行するようになりました。
「モリ・カケ」に留まらず、「桜を見る会」が問題になっていますが、トップが平気で嘘をついたとしても、公文書を隠蔽・改竄したりして、その嘘を不法に庇おうとさえしています。
国家公務員は、天下・国家のことを考えず、自らの出世や地位の安定のみしか考えなくなってしまったようで、長期政権がもたらす驕りや偏った権益等に加担するだけで、チェックし修正させる役割を全く果たしていないように見えます。
恥ずかしい限りです。
日本人は、「恥を知る」ことを忘れてしまったのでしょうか?
「武士道」を世界に紹介した新渡戸稲造も立つ瀬がなく、忘れられて行きかねません。
このままでは、何もかも世界から取り残されて行きかねないことは、YTさんの言われるとおりだと思います。